真空浸炭

コールドウォールの真空炉で行う真空浸炭は、従来のガス浸炭に比べ、数多くのメリットがあります。酸化が起こらない、浸炭の均一性が向上する、チャージ毎の処理の再現性に優れている、最終的な浸炭深さなど冶金学的公差が縮小できる、部品中心部の硬度がコントロールできる、などのメリットです。このプロセスでは、二酸化炭素やその他の有害化学物質の排出が削減でき、環境基準達成にも有利です。

ECMテクノロジーのインフラカーブプロセス Infracarb® とは、真空浸炭処理設備 ICBP® で使用するソフトで、特許を取得しています。正確には、高温になった分子のクラッキングにより表面炭素濃度を高める炭化水素アセチレンガスと、拡散用中性ガスの窒素を交互に注入するプロセスのことです。

この処理のあと、マルテンサイト組織を得るために、油焼入れまたはガス焼入れで冷却を行い、ワークの中心と表面を希望の強度に仕上げます。焼き入れの媒体は、処理材料の焼入れ性と質量によって選択します。

このプロセスの目的は、高反応性ガスの分解によって生じる単原子炭素の濃度を、部品表面上で高レベルに保ちつつ、かつスチールの炭素溶解限度を超えないよう維持して煤の形成を防ぐことです。また、雰囲気が常にほぼ一定に保たれ、従来の一酸化炭素と二酸化炭素の比率に基づくガス浸炭に比べ、浸炭効率がはるかに優れています。真空浸炭では、カーボンポテンシャルの概念が不要となるため、炉内の雰囲気制御の必要がなくなり、根本的にプロセスがよりシンプルになります。

ECMテクノロジーのインフラカーブ Infracarb® では、温度、ガス注入段階の継続時間、ガス流量、圧力など、基本的な物理的パラメータの制御を確実に行い、処理結果を改善します。

プロセスの処理温度は、一般に従来の浸炭よりも高く、880℃から1050℃。これは、真空炉の加熱ゾーンをグラファイト製とするテクノロジーにより可能となりました。サイクル時間は大幅に短縮され、浸炭の深さにより最高で50%もの短縮が可能となりました

インフラカーブプロセス Infracarb® で、通常の条件下において最も一般的に用いられるガスは、真空浸炭用のアセチレンガス(C2H2)と拡散用の窒素(N2)です。

アセチレンは、合成ガスであるため、純度のコントロールができ、化学反応性が非常に高い(分解率60%以上)というメリットがあります。そのため、ディーゼルエンジンのインジェクタ部品のような、複雑な形状や高い精度を求められる部品の浸炭処理にも適しています。 又、処理前洗浄にムラがあっても浸炭結果への影響が少なく、ソフトスポット発生を防ぎます。 アセチレンは浸透性が高く、表面積の大きな部品も浸炭できます。 浸炭パルスの回数と継続時間は、必要な浸炭深さにより決定します。 インフラカーブ Infracarb® でシミュレーションを行うことで、浸炭条件のパラメータを正確に調節でき、浸炭深さを完璧にコントロールすることができます。

インフラカーブ INFRACARBの主な特徴

・浸炭窒化の場合、アセチレン、窒素、アンモニアを交互に注入。
・浸透中の温度と圧力が一定。
・浸透のパルスの回数と継続時間は、炭素濃度と浸炭深さにより異なります。

大気圧下の浸炭処理と比べたインフラカーブ INFRACARB® のメリット

・ガス分解効率の向上 ・粒界酸化が起こらない
・浸炭深さを完璧に制御し、少ない交差で再現可能
・歯元と歯先で浸炭深さの均一性向上
・チャージ毎に表面上の炭素量を選択可
・クリーンなプロセス:ガス消費量削減、一酸化炭素、二酸化炭素の排出なし
・アセチレンと窒素の混合により、チャージ毎に浸炭深さの調整可能(ECM特許)
・処理温度上昇により、加熱処理時間を大幅に短縮
・出来上がり部品の見た目が優れている
・真空浸炭窒化とストップクエンチ stop-quench® のコンビネーションにより、疲労耐性が向上

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