溶解した金属を固める従来の冶金プロセスとは異なり、粉末冶金では、金属粉末を用いて、焼結というプロセスにより金属を固めます。焼結には、固相焼結と液相に移行する焼結があります。液相焼結の場合、液相が現れるのは、焼結処理温度が、粉末を構成する金属のうち一つの融点を超えたときです。特に銅を含む鋼の焼結がこれにあたります。

焼結前に、冷間加圧段階で事前に成形を行います。これには、原料粉(一種または合金)と潤滑剤を混合し、最終的に生産する部品の形状をした金型に注ぎます。圧縮後の部品の機械特性は不十分で(チョークと同等)、傷つけないよう取り扱いには十分に注意をしなければなりません。焼結の段階で、固体内に物質の移動が起こり、細孔が埋められることによって最終的な機械特性が得られるのです。なお、焼結部品の外形寸法は縮小するため、それを計算に入れて金型を準備します。この段階を完全に管理することで、基準寸法に近い寸法の部品を得ることができ、コストのかさむ仕上げ工程を省くことができます。

多くの場合、焼結工程にはベルト式焼結炉を用います。このテクノロジーでは、プレス工程後に続けて、部品の連続装入ができます。処理部品は、炉内で3つの段階を経ることになります。炉内の第一段階では、300~600℃で結合剤を除去します。第二段階が焼結の段階にあたり、1120~1135℃で処理を行います。この温度での処理時間は10~30分です。最終段階で冷却を行います。冷却速度は毎秒0.5~5℃で、使用するシステムにより決定します。

さらに高温で行う焼結(1200~1300℃)では、特殊なコンベアシステムのついた炉が必要になります。これは、特に酸素の影響を受けやすいクロムの入った混合紛での焼結に必要とされます。しかし、このテクノロジーはコストが高いうえ、コンベアシステムの寿命が非常に短くなります。

真空炉のテクノロジーなら、このコンベアシステムによる制約を受けることがありません。焼結の雰囲気を制御しつつ、高温で部品の焼結を行うことができます。無酸素状態では、クロム入り混合紛のような酸化しやすい混合紛でも焼結ができます。また、このタイプの炉では、ガス焼入れを装備し、コンベア式の炉よりもずっと早く冷却をすることができます。

なお、最終段階では浸炭が必要とされます。このテクノロジーにより、焼結から真空浸炭に中断なく直結することができます。 こうして、結合剤除去、焼結、浸炭、冷却の「オールインワン」サイクルを同一の炉内で実現できるので、処理時間が大幅に短縮できます。