真空浸炭窒化

真空浸炭窒化は熱化学表面処理の1つであり、アンモニア(NH3)の分解によって生じる窒素が、下記の処理段階において炭素と共に作用します。
・化学反応による浸炭要素の表面への定着
・内部への拡散
・マルテンサイト変態焼入れによる部品表面の硬化 結果として、圧縮残留応力が増加し、機械特性が改善されます。 真空状態では、処理中の拡散段階と最終拡散段階においてアンモニアを加熱チャンバー内に注入すると、材料内への窒素の浸透性が高まることが実証されています。

浸炭窒化の各パルスの回数と継続時間は、要求される表面下窒素層の深さおよび窒素濃度に応じて決定されます。 処理温度は960℃までと、大気圧下での浸炭窒化よりも高く設定することが可能です。 したがって、サイクル時間を大幅に短縮しながら、窒素を最高で1mm の深さまで拡散でき、表面における窒素濃度を最高で0.6%にまで高めることができます。

環境基準遵守のため、クラッキングで生じるガスは排気装置通過後に燃焼処理されます。

浸炭窒化では、ピニオン類の疲労強度を確実に改善することができます。トランスミッション用ピニオンを使用した検証実験では、浸炭窒化(CNBP)とマルテンサイト相(180~200℃)での段階的ガス焼入れ(ストップクエンチプロセス)を組み合わせると、通常の真空浸炭・ガス焼入れの場合に比べ、疲労強度が約30% 改善され、衝撃強度も改善されることが実証されています。 これは高トルクのトランスミッション開発に威力を発揮する有望な熱処理プロセスです。